理事長のごあいさつ

 皆様、こんにちは。2019年度の開始にあたりまして、ご挨拶申し上げます。

 昨年度、印象に残った出来事は、医大入学試験の女性差別問題です。2018年8月、東京医科大学の一般入試の二次試験において、「女性」であることを理由に、一律20点を減点するという得点操作が行われていたことが明らかになりました。その後の厚生労働省の調査で、同様の女子学生に対する得点操作を行なっていた医大や医学部が全国で3校あったそうです。
 大学という良識の府において、しかも人命を預かる医師を育てる医科大学において、このような性差別が長年、隠密裏に行われてきたことに慄然とします。この間に、得点操作で不合格にされた女子学生の数は、いったい何人になるのでしょうか。得点操作がなければ合格し、医師の道に進めたのに、不合格になって医師になることをあきらめたり、進路変更によりその後の人生を狂わされた人もいるはずです。
 順天堂大学の学長は、女性はコミュニケーション能力が高いが、20歳を過ぎれば男性と変わらなくなるので、男子学生を救うために女子学生の面接の評価を補正(つまり減点)していたと述べましたが、開いた口がふさがらないとはこのことです。また、多額のお金をかけて育てても女性は妊娠や出産を機に離職する人が多く、医師不足になるため等とも言われています。ならば、女性医師の労働環境、職場環境の見直しや改善が先決事項のはずです。また、女性にとって働きやすい労働環境、職場環境は、女性に限らずすべての人にとっても働きやすいはずです。

 この事件を知り、私も自分の経験を思い出しました。司法修習生に採用されて間もなく実務修習地の地方検察庁に他の修習生(全員男性)と一緒に挨拶に行った時のことです。応対した地方検察庁のトップである検事正は、私を前にして、「僕は女性の修習生を見ると、これで優秀な男性が一人不合格になったのだと思って残念でたまらない。」と言い放ちました。その脳裏に浮かんでいたのは、女性は法曹の世界に向いていない、法曹は男性の世界のものだという偏見でしょう。もし、司法試験で、このような偏見のもと得点操作が行われていたら、私は法曹になれなかったかも知れず、今の人生はなかったかも知れません。それを思うと、入試という職業選択の入口で差別された女子学生の無念さが他人事とは到底思えません。
 今後、今回の得点操作の全容が解明され、差別が可視化されるとともに、すべての被害者の救済が実現することを願って止みません。

 昨年度、当財団は内閣府の「若年層を対象とした女性に対する暴力の予防啓発のための研修事業」をはじめとした事業を受託しました。これらの事業を通じて、少しでも被害者支援に役立つよう取り組んでまいります。どうかよろしくお願い申し上げます。

一般財団法人大阪府男女共同参画推進財団 理事長
弁護士  段林和江