不妊専門相談センター 

性分化の過程 〜男あるいは女に発育していく過程〜 
[2014.03.04掲載]

■男女の決定


男女の性は、受精によって決定するわけではありません。受精によってつくられた「胎児原基」は、どちらの性にも発育できる特徴を持っています。男女の性が決定するには、性染色体の遺伝子に始まり、思春期あるいは青年期まで続く性分化の過程があります。これらすべてが、女性なら女性、男性なら男性と一致して初めて、男女が決定されます。

1)染色体による分化(遺伝子の性)
ヒトの染色体は46本あり、2本組となって23対あります。そのうち性染色体は1対2本で、男性ではXとY、女性XとXとなっています。性染色体以外の22対44本は常染色体といいます。性の分化では、性染色体が重要な役割を果たします。生殖細胞である精子と卵子は、精巣あるいは卵巣において減数分裂という生殖細胞に特有な過程を経て、染色体数は半分の23本になります。

●精子の染色体数:46,XY(44本の常染色体とXとYの2本の性染色体)
 【減数分裂により】
23,X精子(22本の常染色体と1本のX性染色体)と23,Y精子(22本の常染色体と1本のY性染色体)になる

●卵子の染色体数:46,XX(44本の常染色体と2本のX性染色体)
 【減数分裂により】
23,X卵子(22本の常染色体と1本のX性染色体)と23,X卵子(22本の常染色体と1本のX性染色体)になる

最初の性分化は受精の際におこります。23,X卵子が、23,X精子または23,Y精子と受精することになり、23,X卵子と23,X精子が出会えば、受精卵は46,XXをもつ女性(遺伝的女性)になり、23,X卵子と23,Y精子が出会えば、受精卵は46,XYをもつ男性(遺伝的男性)になります。このように染色体による性は、Y染色体の有無により決定されます。Y染色体をもたなければ、X染色体の数にかかわらず女性になります。 なお、受精時やその後の異常のために性染色体がX1本となったり、XXYなど3本となるなどの異常が起こる場合もあります。

2)性腺の分化(精巣と卵巣の分化)
性染色体によって遺伝的な性が決まっても、すぐに女性・男性になるわけではありません。次に性腺が卵巣か精巣かに分かれます。胎齢4〜5週目には、性腺となる性腺原基が認められます。この中には後に卵子あるいは精子に発育していく原始生殖細胞も含まれています。
性の分化では、この性腺原基が精巣と卵巣のどちらに分化するかが重要です。Y染色体には性腺を決める遺伝情報である「SRY遺伝子」があります。受精の際に性染色体が決まると、このSRY遺伝子が性腺原基を精巣に変化させます。Y染色体がなければSRY遺伝子も存在しないため、性腺原基は精巣には変化せず、自動的に卵巣になります。つまり、男性になるためには性腺を精巣にするSRY遺伝子が必要なのです。
ただし、Y染色体があるのにSRY遺伝子が存在せず卵巣になったり、Y染色体がないのに精巣にする遺伝情報が紛れ込んで精巣になることもないわけではありません。

3)内性器の分化
内性器とは、女性の卵管・子宮・膣、男性の精管・精嚢・前立腺をいいます。胎生6〜7週目には、内性器の起源となる「ミューラー管」(卵管や子宮になる)と「ウォルフ管」(精管や精嚢になる)を2本ずつ持っています。
性腺の分化で精巣が発育すると、胎生8週ころから機能し始め、精巣からミュラー管抑制因子(AMH)と男性ホルモン(テストステロン)が分泌されます。そのため、ミュラー管の発育を抑制することにより卵管や子宮はできなくなり、男性ホルモン(テストステロン)によりウォルフ管が発達して精管や精嚢ができます。一方、性腺の分化で卵巣になると、ミュラー管抑制因子(AMH)がないためミュラー管の発育は抑制されず、卵管や子宮ができ、男性ホルモン(テストステロン)が働かないためウォルフ管が発達せず精管や精嚢はできません。つまり、内性器の分化は基本が女性型であり、精巣からのミュラー管抑制因子(AMH)と男性ホルモン(テストステロン)がある場合のみ男性型になります。なお、卵巣の有無は内性器の発達には無関係です。

4)外性器の分化
外性器とは、女性の陰核や陰唇など、男性の陰茎や陰嚢などをいいます。胎齢8週では、男女両性の外性器は全く同じで、どちらの性へも分化できる能力をもっています。
性線の分化で精巣が発育した場合、男性ホルモン(テストステロン)によりに外性器は男性化し、陰茎や陰嚢などができます。一方、卵巣が発育した場合、男性ホルモン(テストステロン)が働かないため陰茎や陰嚢ができず、陰核や陰唇ができます。外性器の分化は胎生12週までに起こります。外性器の分化も、基本は女性型であり、男性ホルモン(テストステロン)がある場合のみ男性型になります。なお、卵巣の有無は外性器の発達にも無関係です

5)脳の分化
妊娠20週前後に男性ホルモン(テストステロン)が多いと脳の中にある性中枢が男性として認識し、出生以後も男性としての性行動を取ることになります。一方、その時期に男性ホルモン(テストステロン)が少ないと性中枢が女性として認識して、女性としての性行動をとることになります。この脳の性分化は、胎生90日頃までに決まります。脳の分化も、基本は女性型です。
染色体・性腺・性器が男性でありながら、男性ホルモン(テストステロン)の量が少ないと、生まれてから男性としての性行動よりも女性としての性行動をとります。その逆も同じで、染色体・性腺・性器が女性でありながら、男性ホルモン(テストステロン)の量が多いと、生まれてから女性としての性行動よりも男性としての性行動を取ります。これらは、性同一性障害の典型例とされています。

6)社会的な性(戸籍上の性)
生まれたときに外性器で性別を判断することが多く、このときに決定した性別が戸籍上の性となっています。しかし、誤った判断によりその後の一生が左右されることもあるため、陰核の肥大した女児であるのか、陰茎が小さい男児であるのかの判定に苦慮する場合は、染色体検査などが考慮されます。
通常、戸籍上の性を変えることは困難ですが、特殊な例に限って変更できるようになってきています。

7)精神・心理的な性(ジェンダー)
生まれてからは、男の子は男の子として、女の子は女の子として育てられ、本人もそのつもりになります。このように社会生活上の性により個人の内面で長年にわたって精神・心理的な性が培われていきます。このような性の社会的側面をジェンダーといいます

8)身体的な性
思春期になると性ホルモンにより外形的な身体つきが、男性らしく、女性らしくなります。まれに副腎ホルモンなどの影響を受けて、正常な発育が損なわれることもあります。


■性分化の異常


性染色体、ホルモンなどのいずれかに異常があれば、性の分化は不完全となります。その代表例は以下のとおりです。
クラインフェルター症候群
ターナー症候群
クラインフェルター症候群は47,XXY、ターナー症候群は45,Xの異常染色体を持っています。生殖細胞の減数分裂の過程で性染色体の分離がうまくいかなかったことが原因であることが多く、染色体の数に異常が生じたためです。いずれも性腺は未発達で、生殖機能を持たない場合があります。
なお、ダウン症候群(21トリソミー)も、第21番常染色体が1本多い、常染色体の数の異常です。
副腎性器症候群
(先天性副腎過形成)
女性の染色体(46,XX)を持ち、卵巣もありますが、外性器は男性型です。原因は副腎皮質酵素の先天的欠損により、下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰に分泌され、副腎が過形成を起こしてアンドロゲン(男性ホルモン。テストステロンもこの一種)を大量に分泌します。過剰なアンドロゲンのために外性器が男性型となります。
精巣女性化症候群 男性の染色体(46,XY)を持ち、精巣もありますが、外見は女性です。アンドロゲン受容体がないために男性化がおこらず、外性器や乳房はエストロゲンの影響を受けて女性型となります。
先天性膣欠損症 女性の染色体(46,XX)を持ち、卵巣も正常にあり、ホルモンの性状に分泌されていて、二次性徴も正常です。内性器の分化の異常で、内性器は、性腺や外性器よりも異常が起きやすいとされています。膣の外に近いごく一部(約2cm)は外性器とともに作られるため、先天性膣欠損の女性にもみられます。欠損の程度により「膣の一部欠損」「子宮・膣の欠損」「子宮・卵管・膣の欠損」に分かれます。



【引用・参考文献】
*三宅婦人科内科医院ホームページ:「男女の決定」「性器の分化」「先天性膣欠損症」(アクセス:2013.11) *坂井建雄他(2008):カラー図解 人体の正常構造と機能 全10巻縮刷版.日本医事新報社
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